君という名の翼
有馬記念翌日の12月25日、
ディープインパクトの競走登録が抹消され、記録の上でも引退が決定した。

これを機会に「ディープインパクトに「競馬を教えられたレース」
という観点で振り返ってみたい。

「三冠馬」を教えてくれたレース
2005年 4月17日 皐月賞 1着 ディープインパクト

落馬寸前のスタートを切りながら圧勝した皐月賞。
このレースで、ディープインパクトの底知れぬ強さを感じた。
すでにこの時点で3冠馬との呼び声も高かったが、
それまでの自分の中でのディープインパクト評は、
世代の中では抜けて強いが、日本競馬史上では?
程度で、まだ絶対視はできなかった。
そこにあのアクシデントの中の圧勝劇。
あんなレースを見せられては、
「これは3冠を獲るな」と感じずにはいられなかった。

「最強の走り」を教えてくれたレース
2006年 4月30日 天皇賞(春) 1着 ディープインパクト

ディープインパクトのベストレースは天皇賞(春)だと、自分は考えている。
掟破りの3コーナーでのスパート開始、そして3分13秒4のレコード。
10年先になっても、こんなレースは見られないかもしれない、
と直線で伸びていくディープインパクトを見ながら感じていたことを思い出す。
まさに、「最強馬」の走りとはどういうものかを教えてくれたレースだった。

「世界の壁」を教えてくれたレース
2006年 10月1日 凱旋門賞 失格 ディープインパクト

そして、凱旋門賞を外すわけにはいかない。
今回の凱旋門賞は単に、敗北という事実や、薬物問題云々だけではなく、
自分たち競馬ファンの姿勢や、マスコミ報道、JRAの対応など、
学ぶべき点がたくさんあったと思う。

まず単純にレースの中身を振り返れば、やはり先行策が悔やまれる。
当時は「あれで精一杯の走りだったんだ」と納得もしていたが、
ジャパンカップ、有馬記念と日本でのレースを見るにつれて、
「この走りがフランスでできれば、勝てたかもしれない」との思いが強くなっていった。

次に自分たちファンの対応。
自分はフランスに行っていたので、現地でファンの姿を目にしていた。
詳しくは「凱旋門賞 観戦レポート1」にあるが、
今冷静になって考えてみても、やり過ぎの感は否めない。
場をわきまえた対応が求められる。この辺りは今回学んだ中でも大きな収穫でもある。
今回観戦した人は、フィードバックをすることが必要だろう。

そして、スタッフ、JRAの対応。
特にJRAの対応は、競馬を知らない人には誤解を感じさせるものだったと思う。
競馬を知っている自分でさえ、会見を見て混乱させられてしまった。
さまざまな問題があり、素直に認めることはできなかったかもしれないが、
いちファンとしては「ミスでした。申し訳なかった」
というメッセージを送ってもらえた方が良かったように感じる。

また、凱旋門賞に限ったことではないが、
中立と興行のバランスという問題もディープインパクトは投げかけた。
JRAはクラシック開幕の時点で完全にディープ寄りになり、
ダービー時には像を展示するなど、すでに別格の扱いになっていた。
この手法は有馬記念でしっぺ返しを食らうことになったものの、
凱旋門賞まで続き、もし薬物騒動が無かったとしたら、
有馬記念まで続いていたと思われる。
競馬もイベント、興行の性格を持っているスポーツとしての側面があり、
ある程度の盛り上げはあっても良いはずだし、
事実JRAはこの部分が弱いともされていた。
しかし、そのプロモーションが過剰になりすぎた面も少なからずある。
競馬はスポーツという面も確かに持つが、根はギャンブルであって、
主催者としては公正中立の視点を意識してほしい。
(公正中立なんて本当は有り得ないが)
一頭だけにスポットを当てすぎるのではなく、他馬や他陣営も気遣った、
節度を守りつつもレースを盛り上げるものならば、
多くの人が歓迎し、そして楽しんでもらえるものになるだろう。


きっとこれから、ディープインパクトの走りを伝えていくのは、
ディープインパクトという馬で競馬を知った若いファンであって、
決して自分たちではないと思う。
そして、ディープインパクトをきっかけに、競馬を支えていく人たちも出てくるだろう。
ディープインパクトは己の強さだけではなく、
将来の日本競馬そのものへも、財産を残してくれた。

「シンザンを超えろ」「ルドルフを超えろ」
そうやって日本競馬は一歩一歩進歩してきた。
ディープインパクトを超える馬も、いつか必ず現れる。
その時までに、
ふさわしい舞台とふさわしい登場人物、そしてふさわしい観客を用意すること。
これが、ディープインパクトから自分たちに託された使命なのかもしれない。
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by daisuke-k-20 | 2006-12-31 18:29 | 2006古馬GⅠ戦線
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